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[Q&A]「酒に酔って覚えてない」は罪にどう影響しますか? 

質問

車内に妻がいることを確認せずに機械式立体駐車場を操作してしまい、動き出した機械に妻が挟まれて死亡した事件で、機械操作をした夫が重過失致死罪で立件見込みというニュースがありました。夫は「酒に酔って覚えていない」と供述しているようですが、こうした事情がどのように犯罪の成否に影響しますか。


回答


「酒に酔っていて」物事の認識や判断能力を欠いている、あるいは著しく乏しい状態であったとすれば、心神喪失・心身耗弱状態を理由に責任能力がない、あるいは著しく乏しいとして刑が免除・減刑となります(刑法39条)。物事を判断できない状態で行った行為は非難できないからです。

今回のケースでも、酒による酩酊状態で立体駐車場の機械を操作した時点で心神耗弱等の状態だったとすれば、刑の減軽等がされるのが原則となります。


ただ、自ら酒や薬物を摂取して判断能力等に支障を生じさせておきながら、その状態で行った犯罪がすべて無罪や減刑になるとすれば、いかにも不公正で一般市民は到底納得できないでしょうし、酒の勢い・力を利用して犯罪行為に及ばんとする輩も出てくるでしょう。

そうした矛盾を解消するために考えられたのが、「原因において自由な行為」という理論です。


「原因において自由な行為」とは、心身喪失・心身耗弱の状態で犯罪行為に及んだ場合でも、完全な責任能力を有している状態で酒や薬物を摂取して自ら心神喪失・心身耗弱の状態を招いたのであれば、刑法39条を適用せず、完全な責任能力を問うことができるという理論です。


今回のケースは、「過失犯」である重過失致死の疑いで送致されるようなので、あえて「原因において自由な行為」として説明する必要はないかもしれません。


今回のケースでは、仮に機械操作時に心身耗弱等の状態であったとしても、飲酒後に自身が立体駐車場の機械を操作し得る状況で、酒に酔って酩酊状態になれば安全確認や操作を誤る可能性があるとわかりながら、あえて酩酊状態になるまで酒を飲み、その結果、妻の安全確認を十分に行うことを怠って本件事故を起こしたと評価されれば、刑法39条は適用されず、重過失致死罪あるいは少なくとも過失致死罪が成立する可能性があります。



詳しい回答内容は取材協力した弁護士ドットコムニュースに掲載されていますのでそちらをご覧ください。

 

 

弁護士 清水 俊


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