質問
エスカレーターでのベビーカー使用は危険であるため禁止されていますが、実際にはよくみかけます。万が一、ベビーカーが落下するなどして他の利用者等が怪我をした場合、どのような法的責任が発生し得るでしょうか。
回答
まず、民事責任としては、不法行為に基づく損害賠償責任が発生します(民法709条)。入通院に伴う治療費や通院交通費、入通院期間に応じた慰謝料、怪我で会社を休まなければならない場合の休業損害などを賠償する義務が発生します。もし、被害者に後遺障害が残った場合には、その体の不自由さに応じた後遺障害慰謝料や将来の収入減少(逸失利益)等の賠償が加わります。
また、エスカレーター利用の禁止事項に違反した上で事故が発生しているため、基本的に被害者側に過失が認められる余地はなく、損害について100%賠償する責任があると考えたほうがよいでしょう。
賠償額は多額になり得ますが、個人賠償責任保険の適用があれば保険金で全部又は一部の賠償をすることが可能です。エスカレーターを通常利用することが第一ですが、万が一のために保険加入の有無・適用の要件などを確認しておくといいと思います。
刑事責任としても、過失によって怪我をさせた以上、過失傷害罪等が成立します。刑事罰は基本的に故意犯、あえて犯行に及ぶ場合の処罰を念頭に置いていますので、過失傷害罪については30万円以下の罰金又は科料と比較的軽い法定刑になっています(刑法209条1項)。ただし、過失であっても「業務」上の行為で怪我をさせた場合や、単なる過失を超えて「重大な過失」が認められる場合には、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金と重い法定刑が定められています(刑法211条)。
今回の場合には、エスカレーターの禁止事項に違反した上で事故が発生しており、エレベーターを利用するなど他の方法を採ることで容易に事故を防げたと考えれば「重過失」が認められ、重い刑事罰が科せられる可能性もあります。
詳しい回答内容は弁護士ドットコムニュースに掲載されていますのでそちらをご覧ください。
弁護士 清水 俊
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