質問
会社の同僚に病気をうつしたら傷害罪になりますか?
回答
新型コロナウィルスが世界的に流行している中で、このような質問がありました。
コロナウィルスやインフルエンザに感染している人が、病気を認識しながらあえて出社して病気をうつした場合、理論上は傷害罪が成立し得えます。ただ、実際には因果関係の立証が困難だと考えます。
つまり、感染力のある病気に罹患した人が出社し、現にほかの社員が同じ病気を発症したとしても、他の感染経路を否定できないため、どうしても因果関係に合理的な疑いが残ってしまいます。コロナウィルスなど潜伏期間が比較的長い場合にはその他の感染ルートの可能性がより大きくなります。病気をうつすためにあえて感染リスクの高い行為に及ぶなどの事情がない限り、なかなか刑事事件にはなりにくいと考えます。
他方、感染させ得ることを認識しながらあえて職場に行く行為は、他の労働者の健康を害し、職場環境を乱す危険性のある行為です。会社も、その事実が判明した段階で事業所の消毒作業や一斉休業などの対応を余儀なくされる可能性もあるため、場合によっては労働契約上の懲戒処分や民事上の損害賠償の対象にはなり得ると考えます。
弁護士 清水 俊
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