質問
ある女性が、交際する男性が結婚していたにもかかわらず、そのことを知らされることなく、15年間も交際関係を続けていた問題で、当該女性が1000万円の賠償を求めたという報道がありました。そのような請求は「法外」でしょうか。また、恐喝罪に当たるのでしょうか。
回答
まず、既婚の事実を隠して女性と交際する行為は、女性の貞操権等を侵害する不法行為にあたり、女性が被った精神的苦痛への慰謝料など損害賠償請求の対象となります。
ただ、慰謝料については、これまでの裁判例の蓄積による相場感はあるものの、特段、計算式などはなく、また、裁判所で認容されるであろう金額になるべく近づけて請求しなければならない、というものでもありません。
むしろ、本人の意向やその後の和解交渉を見据え、相場感より高めに設定することも往々にしておこなわれています。ただし、請求金額に応じて訴状に貼る印紙代が高くなりますし、弁護士費用も契約内容によっては高額になり得るため、そうした観点からの歯止めはあるかと思います。
さて、今回の1000万円という慰謝料が「法外」か、というご質問ですが、「およそ裁判等で認められない」という意味だとすれば、判断しかねます。
そもそも、慰謝料は事案ごとの個別事情により総合的に判断されるものであるため、事情をよく知らない第三者が「法外」かどうか判断しようがありません。
今回のケースについてみると、たしかに貞操権侵害としての一般的な相場感からすれば少し高額なようにも感じますが、他方で、この女性が本当に15年間騙され続けていたとすれば、ご本人の怒りや悲しみは相当なものであり、1000万円という金額設定も心情としては理解できますので、無下に否定できないようにも思います。
恐喝罪についてですが、慰謝料1000万円という金額設定だけで、直ちに恐喝罪になるとは言えません。恐喝罪とは「暴行または脅迫により人を畏怖させて財物等を交付させる行為」を言いますので、典型としては「払わなければ殺す」といった恐喝行為が必要となるからです。
ここでの「脅迫」とは、「相手方の生命、身体、財産、名誉、自由に対する害悪の告知」をいいますが、その観点からすると、『本件に一番相応しいと思う形で本件に幕を引かせて頂きます』という言葉だけでは脅迫行為として不明確ではないかと思われます。
なお、逆に、貸した100万円の返済を求めるという正当な請求権行使であっても、暴行や脅迫を用いれば恐喝罪に該当してしまいますので、その点は注意しなければなりません。
詳しい回答内容は取材協力した弁護士ドットコムニュースに掲載されていますのでそちらをご覧ください。
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